昭和30年代に、両親はアパートから団地に引越しました
駅名になるような団地群
建て替えの話が出た時、すでに私は実家の団地を出ていました。
それからまもなく両親も引越しました。
どこの街でも、少しずつ少しずつ、古い建物が取り壊され、新しい建物が建っていきます。
数十年も経てば、風景が一変しているのは珍しいことではありません。
少し違うのは、もともとの街と建造物の特性から
ひと区画ずつ、ごっそり更地にしていきます。
更地が広大で、なんというかいちいち〝喪失感〟を感じるのでした。
それでも私が生まれ育った区画は、駅から奥の方で
建て替えの話が出てからも二十年ほど変わらずありました。
ただ、私が暮らしていた頃と違和感を感じたのは
建物の老朽化はもちろんですが
芝生や草木の手入れがなされていないためか鬱蒼とした雰囲気
住む人が少なくなり、夜ともなると、一棟の団地の窓に一部屋しか灯が灯っていなかったりという風景でした。
昨年の夏に、とうとう無人となった区画を歩いてみました。
建物が変わらずそこにあって、しかし、誰もいない、というのは
異様な雰囲気でした。
防犯上も危険ではありますが
それとはまた違う意味で…なんと言えば良いのか…
たくさんの蝉の鳴き声が区画一帯に響き渡って山の中のようでした。
後日、また、行ってみようか、と足を向けたら
そしてとうとう、私の生まれ育った一画にも、立ち入り禁止のフェンスが張られていました。
何十年がかりの予定通りの事象でもショックでした。
思わずアタマに浮かんだ言葉が、タイトルです。